お墓の整理「墓じまい」を考えているけれど、「罰が当たるのでは?」「先祖に祟られるかも…」と不安に感じていませんか?本記事では、そのような「墓じまいすると不幸になる」という噂の真偽を解説し、先祖にも家族にも喜ばれる正しい墓じまいの方法をご紹介します。迷信に惑わされず、安心して供養を続けるためのポイントをぜひお読みください。
目次
墓じまいで「不幸になる」という噂は本当?
結論:墓じまいで不幸になることはありません
端的に申し上げると、墓じまいで不幸になるというのは迷信です。そのようなことは起きません。
仏教の教えでは、人は亡くなると極楽浄土へ向かうため、現世に留まって人を祟るということはないとされています。また、実際に墓じまいをした方々のデータを見ても、墓じまい後に不幸な出来事が起きたという科学的な根拠は一切ありません。
近年、改葬件数は増加傾向にあり、2012年の約8万件から2022年には15万件を超えています。これだけ多くの方が墓じまいを選択していますが、そのほとんどの方が問題なく過ごしていらっしゃいます。
仏教の教えと迷信の由来
仏教では、人は亡くなると輪廻転生によって新たな世界に向かうと教えられています。故人の魂は現世に執着せず、安らかに次の世界へ旅立つものとされているため、現世の人を祟るという概念はありません。
むしろ、墓じまいは先祖を粗末にする行為ではなく、先祖を大切に思うからこその前向きな決断です。適切な手順を踏んで新しい供養の形に移行することは、先祖にとっても安心できることなのです。
データが示す現実
厚生労働省の統計によると、ここ10年で改葬件数は大幅に増加していますが、墓じまいに関連した不幸な出来事が統計的に確認されたことはありません。多くの方が新たな供養の形を選択し、心安らかに過ごしていらっしゃるのが現実です。
なぜ「墓じまいは不幸を招く」と言われるのか?
言葉の誤解とイメージによるもの
「墓じまい」という言葉自体が誤解を招きやすい原因の一つです。「お墓をしまう=先祖をないがしろにする」といったイメージが一人歩きし、「罰当たり」と感じる方もいらっしゃいます。
また、日本では昔から「先祖を粗末にするとバチが当たる」という言い伝えがあり、それが転じて墓じまい=不幸と思われがちです。しかし、これは単なる言葉のイメージの問題であり、実際の墓じまいは供養の継続なのです。
偶然の出来事が恐怖心を増幅させた
「墓じまいを決めた途端に身内が体調を崩した」「墓じまいの話を進めていたら自分が入院した」といった偶発的な出来事が、噂を信じる人を増やした可能性があります。
しかし、これらは墓じまいという大きな決断によるストレスや疲労が原因であって、先祖の祟りではありません。引っ越しなど他の大きなライフイベントでも同様の体調不良は起こりえます。
戒めとして生まれた言葉
「墓じまいすると不幸になる」という言葉は、ある意味で先人からの戒め的な方便だった可能性もあります。「お墓を粗末にしないように」との思いから生まれた教訓が、時代とともに極端な表現になったのかもしれません。
墓じまいをせずお墓を放置するとどうなる?
無縁仏になり強制撤去される恐れ
管理されず放置されたお墓は、数年間管理料の未納が続くと墓地管理者によって無縁墓として公告され、最終的には墓石が撤去されて合祀墓に埋葬される可能性があります。一度合祀されると、遺骨は二度と個別には戻すことができません。
これこそが、先祖に対して申し訳ない結果と言えるのではないでしょうか。
墓地が荒れて周囲に迷惑・墓石倒壊の危険
長期間お墓参りや清掃をしないと、雑草や苔で墓所が荒廃し、見た目にも悲惨な状態になります。さらに、石材は風雨で劣化してヒビが入り、地震や強風で倒壊するリスクもあります。
万一倒壊すると、隣のお墓を傷つけたり、参拝者に怪我をさせたりする可能性もあり、社会的な責任問題にもなりかねません。
供養の場が失われ親族の絆も希薄に
お墓を放置するということは、事実上誰もお参りしなくなるということでもあります。これによって年忌法要の場がなくなり、親族が集まる機会も減ってしまいます。
さらに将来、子や孫の代になるほど先祖への意識が薄れ、結果的に誰も手を合わせなくなる恐れもあります。
先祖も安心!不幸を招かない墓じまいの進め方
親族への相談・同意取り付け
墓じまいを成功させる第一のポイントは、家族・親族の合意形成です。勝手に決めてしまうと後で「聞いてない」と揉めて、かえってトラブル(本当の不幸)になるケースがあります。
自分一人で抱え込まず、兄弟や親戚に現状を説明しましょう。法事の集まりなどで提案してみるのも良い方法です。皆で話し合えばきっとうまくまとまります。
菩提寺・墓地管理者への事前連絡
菩提寺がある場合は離檀の相談が必要ですし、公営・民営霊園でも管理事務所への連絡が必要です。これを怠るとお寺との関係が悪化したり、違約金が発生する可能性もあるので、必ず事前に相談しましょう。
離檀料の相場や、相談時のマナーについても事前に調べておくことをおすすめします。
改葬先の検討と確保
遺骨の新しい安置先を決めるステップです。永代供養墓・納骨堂・樹木葬・散骨・手元供養など様々な選択肢があります。どれが先祖にとって幸せかを考えつつ、家族の負担にならない方法を選びましょう。
特に永代供養墓は、先祖の魂をずっとお寺に守ってもらえる安心な方法として人気があります。改葬には役所の許可証が必要なので、その取得も計画に入れましょう。
閉眼供養と墓石の撤去
実際の墓じまい作業段階では、閉眼供養が必須です。これを行えば墓石はただの石材となり、ご先祖様の魂はきちんと新しい供養先へ移ります。だから不幸になることはありません。
撤去工事は専門の石材店に依頼し、見積もり比較や工事日の立ち会いなど注意点を確認しておきましょう。
新しい供養先での開眼供養
改葬先(例えば永代供養墓)に遺骨を納めたら、開眼供養(魂入れ)の儀式を行います。これで先祖の魂は新しいお墓に宿り、引き続き安らかに供養されます。
これをもって一連の供養の移行は完了です。以後は命日やお彼岸に新しい供養先にお参りしましょう。
専門サービスの活用(オプション)
どうしても自分たちだけでは不安という場合は、墓じまい代行サービスや僧侶派遣サービスの利用も検討できます。行政手続きから法要手配まで任せることができ、肉体的・精神的負担が減って安心です。
墓じまいを検討すべきケース
お墓の承継者がいない
子供がおらず自分の代で墓終いするしかない場合は、まさに墓じまいを考えるべきケースです。あなたは決して冷たい人ではなく、むしろ賢明な判断をしようとしています。
遠方で維持管理が困難
実家から遠く離れて暮らしている方は、お墓を守りたくても難しい現実があります。現実的に考えて、近くで供養できる形に変えるのは愛情のある選択です。
経済的・身体的負担が大きい
高齢や病気、また経済的理由で墓の維持が苦しい場合も検討すべきケースです。ご自身やご家族の生活を守ることも大切で、そのために墓じまいという選択は決して悪いことではありません。
よくある質問(FAQ)
Q1: 墓じまいにはどんな手続きが必要ですか? A1: 改葬許可申請や離檀の手続きなど、役所と寺院双方への手続きが必要です。市区町村役場で「改葬許可証」を発行してもらい、墓じまい当日は閉眼供養を行った後、石材店に依頼して墓石を撤去します。
Q2: 墓じまいにどれくらい費用がかかりますか? A2: 一般的に20~30万円程度が相場と言われます。内訳として、石材店の撤去費用、閉眼供養のお布施、離檀料などが含まれます。改葬先に納骨する費用も別途発生しますので、事前に複数の石材店から見積もりを取ることをおすすめします。
Q3: 墓じまいをするタイミングや時期に決まりはありますか? A3: 明確な決まりはありませんが、春彼岸・秋彼岸やお盆など親族が集まりやすい時期に合わせると良いでしょう。天候の安定した時期に作業することが多く、菩提寺の都合もありますので日程は余裕をもって相談しましょう。
Q4: 墓じまいして遺骨を取り出した後、その遺骨はどうすれば良いですか? A4: 遺骨は新たな安置先に移します(これを改葬といいます)。多くの場合は永代供養墓、納骨堂、樹木葬などを新たに契約して納骨します。改葬先では「開眼供養(魂入れ)」の法要を行い、そこでこれからも供養していきます。
Q5: 墓じまいを親族が反対していて進められない場合はどうすれば? A5: まずは親族の気持ちに寄り添い、なぜ反対するのか理由を聞くことが大切です。多くは感情面の不安ですので、墓じまいしても供養は続けられることや、遠方・無管理で放置する方が先祖に申し訳ないことを丁寧に説明しましょう。一緒にお寺に相談に行くのも効果的です。
Q6: 墓じまいを業者に依頼するとき、注意すべき点はありますか? A6: 信頼できる石材店や墓じまい代行業者を選ぶことが重要です。見積もり内容に「墓石の解体撤去費」「運搬処分費」「整地費用」などが含まれているか確認しましょう。複数業者から相見積もりを取り、金額だけでなく対応の丁寧さも比較しましょう。
墓じまいは決して不幸を招く行為ではありません。むしろ、先祖を大切に思い、将来にわたって適切な供養を続けるための前向きな選択です。正しい手順を踏んで行えば、先祖も家族も安心できる新たな供養の形が始まります。迷信に惑わされず、あなたとご家族にとって最適な供養の道を選択してください。