供養のしやすさや次の世代への継承を考え、墓を改葬する人が増えています。しかし改葬には、墓の管理者や行政に対してさまざまな手続きと申請を出し、それぞれに費用が必要です。
この記事では改葬にかかる費用や、改葬するために必要な手続きの手順をわかりやすく解説しています。検討いただく際の参考にしていただければと思います。
お墓の改葬とは
改葬とは、遺骨を別のお墓に移動することです。「墓じまい」と混同しがちですが、墓じまいはお墓を撤去し、更地に戻し管理者へ返却することを指し、改葬に含まれる場合もあります。改葬には以下の3パターンがあります。
遺骨だけを移動させる改葬
手続きを済ませた上で元のお墓から遺骨を取り出し、新しいお墓に移動させます。新しく墓石を用意し、墓じまいが必要です。
遺骨と墓石を移動させる改葬
遺骨と一緒に墓石も新しい墓地に移動させます。墓じまいが必要で、移動距離によって墓石の運搬費用に違いがあります。
遺骨の一部を移動させる改葬
遺骨の一部を分骨し、別のお墓に移動させる改葬です。墓じまいの必要はなく、新しいお墓を用意します。”
お墓の改葬にかかる費用
地域や宗派によって違いがありますが、お墓の改葬にかかる費用の相場は200~300万円です。墓じまいにかかる費用と、新しいお墓の費用に分かれます。また、役場に提出する書類にかかる費用も、自治体によって異なります。
墓じまいにかかる費用
お墓の撤去にかかる費用は1平方メートル当たり8~15万円です。取り出す遺骨1人当たりの費用は、約4万円かかります。抜魂式や離檀料などに対するお布施も必要になり、墓地管理者にお世話になった期間の長さで金額が変わります。
新しいお墓にかかる費用
新しいお墓の永代使用料や墓石の購入費、納骨式や開眼供養のお布施が必要になります。一般社団法人全国優良石材の会の調査によると、2020年の全国の墓石購入費は157万円です。元の墓地から墓石も移動させる場合は、100キロメートル当たり15~20万円かかります。
お墓の改葬で必要な手続きと手順
改葬には元のお墓に対する手続きと、新しいお墓に対する手続きがあります。しかし、手続きの前に今までお世話になった墓地管理者に改葬の理由を説明し、理解してもらうことが重要です。
それぞれの手続きと手順は以下のとおりです。
新しいお墓に対する手続き
新しい墓地の管理者に墓地代と管理代を支払います。墓地使用許可証、または永代使用承諾証を受け取り、「受け入れ証明書」を発行してもらいます。
元のお墓に対する手続き
元の墓地の管理者から「埋葬証明書」を受け取り、地域の役所で「改葬許可申請書」に必要事項を記入しましょう。役所に書類を提出し、「改葬許可証」を発行してもらいます。
改葬の手順
手続きを済ませたら、元のお墓に開眼供養や抜魂式を依頼し、遺骨を取り出し受け取ります。墓石と一緒に移動させる場合は、運搬業者と事前に打ち合わせておきましょう。新しいお墓で開眼供養と納骨式を行い、納骨すれば改葬は完了です。
お墓の改葬をした際にお祝いは必要?
お墓の改葬にもお祝いがあり、お祝い返しが必要です。
改葬へのお祝い
改葬のお祝いは紅白の祝儀袋に入れ、表に「建碑御祝」、または「建碑設立御祝」と書きます。お祝いなので、新札を入れて渡すのがマナーです。
永代供養をして墓じまいのみの場合は、お祝いではありません。「お供え金」を不祝儀袋に入れて渡します。どちらの場合も金額の相場は5000~10000円ですが、親族間や家族間で金額を取り決めているなら、そちらを優先しましょう。
お祝い返し
改葬に対するお祝いのお返しは、カタログや商品券を贈るケースが増えています。また、改葬の際に集まってくれた人たちに引き出物として渡す場合もあります。お祝い返し費用は、いただいた金額の半分~3分の1です。”
まとめ
墓の改葬には、元の墓と新しい墓、それぞれに手続きが必要です。また、費用も地域や宗派、墓地の面積や墓石によって違いがあります。
改葬は、墓が近くなれば供養がしやすくなる一方、元の墓地管理者への説明を含め多くの手続きと手順があります。
今回は改葬にかける費用や完了までの工程についてお伝えしましたが、実際に検討いただく際の参考にしていただければ幸いです。